大学生スタッフ向け事前研修会「第3期いこま未来Lab ~大学生・U29世代向け公開講座」開催レポート
突然ですが、「高校生の伴走」と聞いてどんなことをイメージしますか?
イマの高校生って何を考えているの?
そもそも「伴走」ってなに?
普段、高校生と関わる機会が少ない方はイメージが湧きにくいのではないでしょうか。
本レポートでは、2023年7月9日(日)に開催された「いこま未来Lab 〜大学生・U29世代向け公開講座(事前研修会)〜」の様子をお届けします。
今回は、2023年7月23日(日)よりスタートする「第3期いこま未来Lab」で高校生の伴走や運営のサポートを行う大学生スタッフ向けの事前研修会として実施。
「ライター」「コミュニティデザイン・プロジェクトマネジメント」「ユースワーク」という分野でそれぞれ活躍されている3名の講師をお呼びして行いました。
皆さんの日常や仕事、活動などに生かせることも多いので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
文:株式会社ここにある 鈴木芽生(すずき めい)
「いこま未来Lab」って?
今回で3期目を迎える「いこま未来Lab」。
生駒市をフィールドに、高校生が地域の大人や大学生と一緒に、自分たちで企画したプロジェクトに取り組む実践型ワークショップです。
色んなまちの大人と出会い、伴走してもらいながら、高校生主体でプロジェクトの企画立案、支援者の募集、プロジェクトの実践までを行います。
第3期の今回は、生駒市地域コミュニティ推進課のメンバーに加えて、尼崎を拠点にまちづくりや場づくりなどの分野で活動する「株式会社ここにある」が企画運営に関わっています。
「まち(生駒)のおもしろい大人と出会い、年齢関係なく友だちになって一緒にワクワクする挑戦をしてほしい」
そんな熱い想いから生まれたこの事業。高校生だけでなく、高校生とワクワクしたい大人や大学生のみなさんとも一緒につくっていけるとうれしいです。
和やかな雰囲気とともに研修会スタート
迎えた当日。メインの大学生スタッフ3名と一般参加者数名と講師を含めた10名ほどで一つのテーブルの島を囲んで着席。
司会の藤本からの「楽しくリラックスした気持ちで参加してくださいね」という声かけとともに、いよいよ研修会のスタートです。
冒頭では、生駒市地域コミュニティ推進課の白川さんより、いこま未来Labについての紹介と今回プログラムに関わる市役所メンバーの紹介がありました。
ユニークな市役所メンバーの紹介のおかげで、より一層、場の雰囲気が和らいだところで参加者同士の自己紹介。
所属や今ハマっていること、参加理由などお互いのことを紹介してから、今回のメインである講座へと入っていきました。
講座1「ライティングってどうするの?」
1人目の講師を務めてくださったのはライターの田中美奈(たなか みな)さん。講座テーマは「ライティングってどうするの?」。
プログラムの活動の様子を紹介するイベントレポートの書き方や伝わりやすい文章について学びます。
ライターの役割は「読み手の世界が広がる瞬間をつくる」こと
講師の田中さんは、友達の活動を応援したいという想いから、インタビュー記事を書いたのがライターになるきっかけとなったそうです。
現在は障がいに対する間違った認識を変えるための記事を書いたり、「先生の学校」というメディア(雑誌HOPE)で執筆したりするなど、記事の中のその人に出会ってほしいという想いを込めてライターとして活動されています。
田中さん曰く、書くことは読み手の世界が広がる瞬間をつくることだそう。文章にはライターの感性が滲み出るものだからこそ、文章を書くときは自分の想いや自分「らしさ」を大切にしてほしいと田中さんは語ります。
イベントレポートを書くときの5ステップ
そして、本題であるイベントレポートの書き方レクチャーへ。イベントレポートを執筆する際は、イベントについて全く知らない読者にもわかりやすいようにするため、前提を省略せずに説明や補足をつける必要があります。
また、田中さんがイベントレポートを書くときには、下記の5つのステップに分けて執筆するそう。
良いイベントレポートを書くためには書く前の準備が肝で、執筆後は文章に違和感がないか、確認・修正して練り直すことも欠かせない作業です。
1本のレポート記事への向き合い方から、田中さんの人柄やプロ意識が垣間見える瞬間でした。
伝わりやすい文章の書き方についてお話しいただいた後のグループワークでは、教えていただいた内容を振り返りながらたくさんの意見が出ていました。
プログラム始動後は大学生スタッフにもイベントレポートを書いてもらう予定です。ぜひチェックしてみてくださいね。
講座2「コミュニティデザインやプロジェクトマネジメントってなに?」
午前中最後は、株式会社ここにある代表の藤本による「コミュニティデザインやプロジェクトマネジメントってなに?」をテーマにした講座です。
まちづくりではなく「かしあう生態系の再編集」
藤本は、8年ほど前から地元尼崎でまちに関わる活動を個人ではじめ、2019年に株式会社ここにあるを設立。
現在も尼崎に拠点を置きつつ、全国各地でまちづくりやコミュニティデザインと呼ばれる分野を中心に活動しています。
「まちづくりという言葉はしっくりこない。やっているのは、まちづくりではなく『生かしあう生態系の再編集』だと思っている」と語る藤本。
200人以上を巻き込んだ拠点づくりや、お寺でカレーを食べたらおもしろそうというアイデアから生まれた「カリー寺」など、過去に実施してきた企画や尼崎のまちについて、自己紹介としてざっくりと紹介しました。
コミュニティデザインとプロジェクトマネジメントのポイント
紹介された数々のプロジェクトはどのように生まれているのでしょうか。
今回のプログラムにおいて特に重要となるポイント3つをご紹介しました。
①AとB(とC)の組み合わせ
例えばカリー寺は「カレー × 寺」という組み合わせでできています。
組み合わせとしては「要素×場所」がやりやすく、そこに驚きや共感があるとより一層魅力的なプロジェクトが生まれる可能性が高くなります。
②仲間と、小さく、不十分に
拠点づくりの取組は、肩書きも強みもバラバラの3人でスタート。できないことを発信していると、延べ200名以上の人が手伝ってくれたそうです。
「できることは素晴らしい。できないことも素晴らしい。できないから手伝ってもらえるし、足りないから貸してもらえる」数多くの経験を持つ藤本はそう語ります。
③なぜやるのか?
「なぜやるのか?」を言語化しておくことで、方向性が明確になったり、周りの人の共感を生み、応援してもらえたりすることにもつながります。
プロジェクトマネジメントのポイント3つ
最後はプロジェクトマネジメントにおける下記のポイント3つをレクチャー。
今回のプログラムでは、プロジェクトチームごとに会議を行ったり、役割分担をして各自で作業をしたりすることが頻繁に発生します。
自分だけでなく、多くのメンバーでプロジェクトを進めていく上で、些細なトラブルやミスを防ぐためにもこれらのポイントは欠かせません。
質問タイムでは、昨年度も大学生スタッフとして参加していた方から「スケジュールが合わないときはどうしたらいいか」など、経験したからこそ出るリアルな質問もありました。
講座3「高校生の支援(サポート)をするってどんなの?」
最後はユースワーカーとして活動されている今井直人(いまい なおと)さんによる「高校生の支援(サポート)をするってどんなの?」というテーマの講座です。
あえてユースワーカーと名乗り、ユースワーク(中高生支援)という活動を広める
今井さんは現在、尼崎市立ユース交流センターの副センター長として、中高生が自由に過ごせる居場所づくりや中高生の伴走支援などを主に行っています。
その他、高校生と地域を繋ぐコーディネーターをしたり、個人の活動として地元(神戸市長田区)に中高生を中心とした若者向けの「ユースセンターはなれ」という拠点をつくったり。
少しでも多くの方にユースワークという仕事があることを知ってもらうため、あえて意識的に「ユースワーカー」と名乗って活動しているそうです。
高校生のイマって?
日常的に中高生と関わる今井さんから、高校生のイマについて教えていただきました。
発達段階的に高校生くらいの子たちは脳がまだ発達途中なんだとか。そのため、個人差はありますが、高校生くらいの子どもたちは自分の行動が何につながっているのかなどを論理的に考えることはまだ難しいそうです。
また、日本財団が実施する18歳意識調査からは、自分に自信がなく、自分が行動しても社会は変わらないと思っている高校生が他国に比べて多いという結果が出ています。
「伴走」は高校生本人の意思を大切にしながら一緒に進んでいくこと
そもそもユースワークとは、若者の成長と幸福を共創するための取組だといえるそう。
それを実現するためには、存在の肯定(若者一人ひとりがあなたのまま存在していいと伝えること)と若者との関係構築が大前提として必要です。
そのため、高校生の伴走をする上では以下の4つの関わり方を意識することが大切だと教えていただきました。
発達段階を念頭に置きつつ、一人の人として対等に関わり、伴走することが求められます。頭では理解していても、いざ高校生を目の前にすると難しい場面も。
大学生スタッフのみなさんには、自身の言動を振り返りながら、より良い伴走の方法を模索していってほしいですね。
高校生の伴走についてレクチャーしていただいたあとは3人1組になって早速実践。
「いざとなると、質問が思い浮かばない」「意外と深掘りをするのは難しい」という声もあり、伴走の難しさをほんの少しだけ体験できたのではないでしょうか。
最後に、高校生と関わる上で「心の声に耳を傾ける」「背景を想像する」「とにかく楽しむ」ことを大切にしてほしいというメッセージをいただき、全3部の講座が終了しました。
研修会(公開講座)を終えて
すべての講座を終え、「もっとたくさんの人に聞いてもらいたいくらい濃くて学びの多い時間でしたね」と白川さん。
大学生スタッフの参加者からは、「昨年度は今回のような研修がなかったのでどうすればいいのかわからない場面があったけれど、今日の研修を通して高校生に対してどのように関わればいいのかより具体的になり安心しました」などの前向きなコメントを聞くことができました。
今回、大学生スタッフとして関わってくれるのは3名。研修で学んだことを生かしながら、それぞれの強みを発揮したり、大学生同士で助け合ったりしながら高校生の伴走を楽しんでもらいたいですね。
ぜひ、今後のいこま未来Labの活動もあたたかく見守り、応援していただけるとうれしいです。
「第3期いこま未来Lab」のスケジュール
「第3期いこま未来Lab」は、2023年7月23日(日)から下記のようなスケジュールで約半年間をかけて行われます。
10/15(日)の「中間報告会!」と来年1/14(日)の「最終報告会!」は一般公開する予定です。ぜひ、高校生たちの活動の様子を見にきてくださいね。
その他、「こんなことで高校生のお手伝いできるよ!」という方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡・お力添えいただけるとうれしいです。
現場からは以上です!